明晰夢で人生を変える①(前編)~睡眠と夢~

2019.3.28

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マーク・ケイ

マーク・ケイ ( 占術家 )

墨が織り成す一子相伝の占術 “篁霊祥命(こうれいしょうめい)” を主な鑑定手法とする占術家。他にも文筆家やイベント・オーガナイザーとしての顔も持つ。また引きこもり支援相談活動なども行なっている。

夢には人生を変える力がある

私達が日々見ている「夢」には人生を変える力がある。

そう言うと皆さん、首を傾げられるかもしれません。

首を傾げる方と、「なるほど、そうかもしれない」と頷く方の違いは自身の「夢」との関わり方、その意識の仕方にあるでしょう。

まるで映画館のスクリーンに映し出される映画作品(つまり「夢」)を、観客席に座って鑑賞している、目撃しているという感覚と、実際にスクリーンの中に自分がいて、自らがその中で主人公として活躍している感覚とがあるかもしれません。

貴方はどちらのタイプでしょうか、もしかしたら両方かもしれません。

こんなお話をたまに聞くことがあります。

「私、ほとんど夢は見ないんです・・・」

実は「夢を見ない」日は1日もないと言ったら驚かれるでしょうか。

夢を見ていないのではなく、ただ忘れているだけなのです。

印象深い夢だったとしても、覚醒後に視覚や聴覚による外的な刺激が一斉に加わって来るために、夢の記憶が薄れていってしまいます。

夢を記憶しておきたいのならば、覚醒後にすぐに起き上がらず、目を閉じたまま夢を頭の中で何度もリピートし直して、覚醒後の脳に植え付け直すという意識が必要です。

人が1日に8時間の睡眠を取ると仮定すると、その内の100分間は夢の中にいます。

成人では1年の内、3〜4ヶ月を、子供ではその半分を眠りに費やしています。

もっと長いスパーンで考えてみると、70歳になる頃には、その内の23年間を眠りに費やし、5年間は夢を見ていることになります。

不思議な夢

人生の3分の1を「睡眠」に、14分の1を「夢」に費やしていることの意味とは何なのだろう。

人には無駄な要素は微塵もない。

それならば「夢」には多くの人が気付いていない何か大切な意味が隠されているのかもしれない。そう考えることがよくありました。

亡き父の夢

キッカケは父を亡くしたばかりの時期に不思議な夢をたくさん見たことです。

その夢は非常に印象深く、時に温かく、時に神々しく、時にグロテスクなもので、しかも朝になり覚醒した後も決して忘れることなく細部まで覚えていることが可能でした。

あまりにも夢をよく覚えていることが出来るので、その時から人生で初めての「夢日記」を付け始めたほどです。

父を亡くした時、私はあまりにもショックで、その事実を受け入れることが出来ず、逃げ回っていました。

病室で父を看取ることも出来ず、父の亡骸をこの目で見ることさえも出来ずに、私が父の側へ行けたのは死後3日経ってからでした。

「なんて酷い息子なのだろう」そうした後悔や罪悪感があったからでしょうか、父を見送った直後から私の夢には毎日のように父が出て来るようになったのです。

夢の中の父は、あくまで私の父であって、現実に則った存在です。父が他の誰かに成り代わるようなことはありませんでした。

毎日のように父が夢に現れることによって、私は後悔や罪悪感から解放され、癒されたといっても過言ではありません。

夢の中で父と取り立てて会話をするような場面はほとんどありませんでしたが、父がこの世に残した私という存在を心から心配しているということ、後悔も罪悪感も全ての「死」にまつわる"負"の感情を捨てるように促していること、いつも見守っているからお前は「今」を懸命(賢明)に生きろと言っていることは十分に伝わって来ました。

父を亡くして、ちょうど1年が経つ頃、それまで夢の中で口を開かなかった父が私を直視して言葉をかけて来たのです。

「お前の夢に毎日のように出て来たけれど、もう今日でしばらく出て来れなくなる、もうお前は1人で大丈夫だ」そう言って父は振り返り背中を見せて歩き始めました。そこで目が覚めたのです。

あれほど毎日のように夢に現れ続けていた父が、本当に翌日から一切夢に登場しなくなり、それは以後数年続きました。

夢に現れ続けたのは、父の霊だったのでしょうか。それとも私の父に対する後悔と罪悪感が作り上げた幻想だったのでしょうか。

中世の騎士の夢

この夢は3歳前後から10代にかけて頻繁に見ていました。

私が中世の騎士で、戦に敗れたのか勝ったのかは定かではありませんが、傷付いた何人もの馬に乗った兵士を引き連れて城に凱旋するのです。

森の細い1本道を進み、城の前まで辿り着くと門番に合図をし、跳ね橋を下ろさせます。

そして城門を潜って馬を降り、礼拝堂(私の父方の先祖がキリシタンだったのは偶然でしょうか)で祈りを捧げた後、城主のいる部屋へ赴くのです。

この城へ向かう道、そこから見える光景、城の間取りなどもハッキリ記憶していました。

夢にだけ頻繁に出て来る1人の女性

現実の世界では一度も会ったことがないのですが、夢で何度も数年に渡り見続けた後で、実際にその女性に街で出くわすということがありました。

その後、その女性を何故ここで?と思いたくなる辺鄙なところでも何度も目撃することになります。

夢の中で黒づくめの男に地下駐車場の壁際に追い詰められて、拳銃で撃たれる夢を見たのですが、その際に「拳銃で撃たれたらこういう痛みがするのか!」と実感できるほどの強い痛みと、熱さをお腹に感じました。

あくまでも夢の中です。そしてその後目を覚ますと、夢の中で撃たれた腹部の同じ箇所に銃弾ほどの大きさの赤い火傷のような痕跡が残っていたこともありました。このように私は不思議な夢を数多く見て来たという経緯があるため、夢に対する関心が非常に強かったのです。

「夢」とは毎日見ているものでありながら、なかなか日常で多くを語られることはありません。

しかし、私はあの父の夢による経験で、「夢」には人を癒したり、現実を自分の思う方向に変える力があるのではないかと考えるようになるのです。

睡眠と夢

睡眠中の脳は「同期性活動」と「脱同期性活動」という2つの基本モデルの間を往復しています。

「同期性活動」とは睡眠中にのみ現れるもので、ニューロン(神経細胞)が互いに調和を持って同期的に発火している状態のことを指します。

*ニューロン・・・情報処理と情報伝達に特化した電気信号を発する神経系を構成する細胞​​上がニューロン(神経細胞)のイラストです。

緑色の部分は細胞体といい直径3〜18マイクロメートルの大きさです。 (1マイクロメートルは0.001ミリメートル)

左側のオレンジ色の枝葉のように分かれた部分を「樹状突起」といい、枝葉に分かれた部分から、さらに枝葉が分かれて、多い場合で数千から数万もの「樹状突起」が形成されて行きます。

この「樹状突起」は「入力」の役割を担います。

右側のオレンジ色の枝葉は「軸索」といい、「樹状突起」とは反対に「出力」の役割を担っています。

この「軸索」が他のニューロン(神経細胞)の「樹状突起」と結合し、出力された信号を受け取る(入力)ことになります。

この結合部分を「シナプス」と呼びます。ニューロン(神経細胞)の発火とは、ニューロン(神経細胞)同士の情報のやり取りに於いて生じる電気信号の変化(膜電位の急上昇)をいいます。

同期性活動では、このニューロン(神経細胞)が調和したリズムで、同期的な電気信号の変化が見られるということですね。

一方の「脱同期性活動」とは夢を見ている時のものです。また同時に覚醒時にも脳は「脱同期性活動」を行なっています。

ニューロン同士、異なった場所同士で相互に活発な情報交換をし、連絡し合っている状態です。

「同期性活動」でのニューロンの発火は調和の取れた同期的な発火ですが、「脱同期性活動」では、まちまちのタイミングの異なった発火をしていると考えれば良いでしょう。

さらにこの同期性(同期性活動)のレベルによって睡眠は四つの段階に分類されます。

第一段階 これは軽い同期の状態であり、入眠期といわれ、いわゆるウトウトした状態です。脳波ではθ(シータ)波とβ(ベータ)波が現れます。

第二段階 入眠時で意識がなくなった時を示します。

第三段階 同期性が高い段階です。深い睡眠に入っており、強い刺激でなければ知覚出来ません。

第四段階 同期性がさらに高まった状態です。脳波ではδ(デルタ)波が顕著となります。

この四つの段階を称して「ノンレム睡眠」といいます。

この「ノンレム睡眠」と対を成すのが上記の第一段階の脳波パターンに類似した「REM睡眠」です。

身体は完全に弛緩していますが、脳は覚醒して活動状態にあります。

ただしこの時は急速眼球運動(Rapid eye movement)といい、眼球が小刻みに動いている状態にあります。この「REM睡眠」時に夢を見ることが多いのです。

一晩の睡眠中、この四つの段階+「REM睡眠」が90分周期で繰り返されることになります。

布団に入り、寝返りを打ったり、より良い姿勢で眠ろうと身体を動かします。その内に徐々にウトウトとし覚醒と睡眠の中間を心地良く彷徨います。

これが上記の第一段階です。第二段階へ至ると、完全に睡眠状態となります。この時に脳内のニューロンは同期を始め発火しています。

この第二段階は10〜20分ほど続き、より深い第三段階の睡眠状態へと移行します。第三段階までは通常45分から60分かけて達します。

その後、第四段階を経た1時間から2時間後に、徐々に浅くなり「REM睡眠」へと至ります。

順番で言いますと「第一段階」→「第二段階」→「第三段階」→「第四段階」→「第三段階」→「第二段階」→「第一段階」→「REM睡眠」となり、この周期が90分間隔で繰り返されることになります。

このことから6時間睡眠では「REM睡眠」は4回、8時間睡眠では5回となります。​上の睡眠ステージの推移を表したヒプノグラムからも分かる通り、時間を経る毎に睡眠周期のパターンは徐々に形を変え、夢を見ている時間(REM睡眠)は後になるほど増えています。

同時に第三段階と、第四段階の時間が短くなっていることも分かります。

上のヒプノグラムでもう1つ分かることがあります。縦軸の「REM睡眠」の上は覚醒時、つまり起きている時を表していますが、睡眠周期の中にありながら覚醒を示している部分が2ヶ所あります。

これは必ず「REM睡眠」の後に起こる現象で、実際に目を開けて覚醒している訳ではありませんが、脳波上では覚醒を示しています。

さっきまで見ていた夢をハッキリと覚えているのは、このタイミングで起きた場合です。つまり「REM睡眠」直後(または「REM睡眠」中)に自然に起きた場合に夢を覚えていることが多いのです。

夢を覚えていられないのは、この睡眠周期に逆らったタイミングで目覚まし時計や、外の騒音や雑踏、人の声などの外的刺激によって覚醒させられる場合です。

人はこの睡眠周期に則って自然に起きることが出来るのですが、この論理で言うと夢を効率よく覚えていたい場合には、起きたい時間から逆算し、90分周期を何倍にした時間に就寝するか決めれば良いということになります。

勿論、長い時間眠りにつけば、それだけ長時間、夢を見ることが可能です。

しかし、鬱病などの心の病、ナルコレプシーなどの睡眠障害があれば、この90分の睡眠周期は短くなり、30分ほどで「REM睡眠」が現れることになります。

「睡眠」と「夢」の関係とメカニズムについて少しだけ理解出来たところで、次回は「夢の共有」というお話をしたいと思います。

次回「明晰夢で人生を変える①(後編)〜夢の共有〜」へ続きます。

 

参考文献

「明晰夢 夢見の技法」スティーヴン・ラバージ著
「みたい夢をみる 明晰夢の技術」チャールズ・マックフィー著
「ドリーム・テレパシー」M・ウルマン+S・クリップナー+A・ボーン著
「夢を操る - マレー・セノイ族に会いに行く」大泉実成著
「臨死体験」立花隆著

マーク・ケイ のプロフィール

マーク・ケイ

画家の父、歌人の母のもと、福岡市博多区で生まれる。

バンド活動を経て、DJ、オーガナイザーとしてアート系イベント、音楽イベントなどを多数手掛ける傍ら、フリーライターとしても活動。音楽雑誌でのアーティスト・インタビュー記事に始まり、書籍、フリーペーパー、WEBなどの媒体で社会問題からオカルトまで幅広いジャンルでコラムを執筆。

引きこもり、不登校、心の病など自身の経験を活かし「ピアカウンセリング」を主軸にしたコミュニティを立ち上げる。のちにひきこもり支援相談士として当事者やその家族のサポート、相談活動を行う。

現在は亡き父から継承した一子相伝の墨を用いた占術『篁霊祥命』や独自のリーディングによって鑑定活動を行っている。2019年で鑑定活動は14年目を迎える。

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