龍が命をかけてもたらした雨 虹の香り ~雨の言の葉たち~『四季に寄り添い、祈るように暮らす(連載第五十七回)』

2020.6.19

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三浦奈々依

三浦奈々依 ( フリーアナウンサー )

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。
ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり連載「神様散歩」を執筆。『福を呼ぶ 四季みくじ』出版。カラーセラピストとしても全国で活動中。

今年も梅子黄(うめのみきばむ)の時季がやってきました。

梅の実が黄ばみ、熟す頃ですね。

梅雨に入り、曇りや雨の日が続きますが、雨が小降りになりうっすらと日が射す瞬間があります。その様子を「梅雨明り(つゆあかり)」と言うそうです。なんとも風情がありますね。

じめじめとして少しブルーな気持ちになる梅雨時ですが、美しい日本の四季の言の葉に触れて、心癒されましょう。

龍が命をかけてもたらした雨、花盛りは雨が続くと言われる花、すべてを真っ白に染め上げる雨・・・

今日は「雨」の言の葉たちをご紹介します。

雨香(うこう)

古代ギリシャの哲学者、アリストテレスは「雨の香り」を「虹の香り」と表現したそうです。

なんともロマンティックですね。

雨に濡れた草木の香り、雨上がりに大地から立ち上ってくる香りをかぐと、なんだか泣きたいような、懐かしいような、何とも言えない気持ちになります。

「香りの記憶」は、私たち人間の中にもっとも長く残ると言われています。

雨の香りに感じる懐かしさは、皆さんのいつかの日の記憶とつながっているかもしれません。雨が降ったら、雨の香り、虹の香りを楽しんでみませんか?

分龍の雨(ぶんりゅうのあめ)

その昔、雨は天にいる龍が降らせると信じられていました。

分龍の雨は、旧暦5月、ちょうどこの時季に降る大雨のこと。ものすごい形相をした龍が雨を降らせる様をイメージしただけで身がすくむ思いがしますね。

その雨の激しさは、龍の体をも分かつほど、と表現されました。

日本各地に、命をかけて雨を降らせた龍の伝説が残されています。

愛知県一宮市にある真清田(ますみだ)神社。

その昔、弘法大師空海が雨乞いをしたものの雨は一向に降らず、空海は茅草で作った龍に命を吹き込んだのです。

すると一頭の龍が姿を現し、「天下の龍すべてが龍王に降雨を禁じられているため、一滴の水も吐けぬ。逆らえば殺されてしまう」と言い、空海は「もし汝が犠牲とならば、神として祀ろう」と約束をしました。

硯の水を大地に注ぐと、にわかに黒雲が天を覆い尽くし、激しい雨とともに裂かれた龍の身体が天からばらばらと落ちてきました。

空海は龍の身体を集めて供養し、約束通り真清田神社に祀ったと伝えられています。

真清田神社は、一点の曇りもない、清らかな空気に包まれた美しき神社。

尾張開拓の祖である「天火明命(あめのほあかりのみこと)」を主祭神としてお祀りしています。

栗の花霖雨(くりのはなりんう)

栗はちょうど今時季、枝に猫じゃらしのような乳白色のふさふさした花穂をつけます。

これが雄花。

雌花は緑色のトゲトゲに包まれて、人知れずひっそりと咲きます。

栗というと、私は、お正月の栗きんとん、その他、和菓子の栗ぜんざいや栗羊羹などが頭に浮かびます。ちょっと上品な、和菓子の贈り物的なイメージでしょうか。

ちなみに、栗の花の花言葉は「贅沢」「真心」「豊かな喜び」です。

古くから栗の花盛りは雨が続くと言われます。

霖雨(りんう)という言葉は、何日も降りつづく雨や、長雨を指す言葉。

栗の花霖雨とは「梅雨」を表す言葉です。

 

白雨(はくう)

私が執筆しました『福を呼ぶ 四季みくじ』には、「白雨」というカードがあります。

うだるような暑い夏の午後。冷たい風と共に突然降り出す激しい夕立は、一瞬にして世界を白く染めるので「白雨」と呼ばれました。

突然激しい雨が降り出したかと思うとみるみる空が晴れ渡り、七色の虹がかかる。

虹は、雨がもたらす涼やかな贈り物ですね。

このカードは、まるで白雨の如く、日常を一変させるような運命的な出来事を暗示するカードでもあります。恐れずに変化を受け入れ、変化を楽しみ、挑戦を続けたその先に、あなたの想像をはるかに超えた輝く未来が待っているという吉兆カード。

白雨と出合ったら、どんなに小さなことでも構いません。

生活に変化を起こしてみませんか?

例えば、いつもと違う道を通ってみる、懐かしい人に連絡をしてみるなど、いつもなら選ばない何かを選んでみるのもいいかもしれません。

いかがでしたか?

雨は天つ水(あまつみず)、天の水です。

そう考えると雨の日は天と地がつながる特別な一日、そんな気がします。

参考文献

『お家で楽しむ デイリーおみくじ「福を呼ぶ 四季みくじ」』
三浦奈々依(文)、観瀾斎(絵)、栗原周玉(書):プレスアート(発行)

 

三浦奈々依 のプロフィール

三浦奈々依

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。

ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。
東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり「神様散歩」の連載を執筆。心の復興をテーマに、神社仏閣を取材。

全国の神社仏閣の歴史を紹介しながら、日本の文化、祈りの心を伝えている。

被災した神社仏閣再建の一助となる、四季の言の葉集「福を呼ぶ 四季みくじ」執筆。


http://ameblo.jp/otahukuhukuhuku/
アマゾン、全国の書店、世界遺産・京都東寺等で販売。


カラーセラピストとしても全国で活動中。
旅人のような暮らしの中で、さまざまな神社仏閣を訪ね、祈り、地元の人々と触れ合い、ワインを楽しむ。

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