秋の彼岸~夕日を見送り亡くなった人をしのぶ~『四季に寄り添い、祈るように暮らす(連載第二十二回)』

2019.9.20

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三浦奈々依

三浦奈々依 ( フリーアナウンサー )

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。
ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり連載「神様散歩」を執筆。『福を呼ぶ 四季みくじ』出版。カラーセラピストとしても全国で活動中。

まもなく、秋の彼岸ですね。

この時季、燃え立つような赤、心洗われるような純白の花を咲かせるのが「彼岸花」。

以前、秋の出雲大社で、咲き乱れる彼岸花に漆黒のアゲハ蝶が舞う光景を目にしました。蓮の花とともに、「天界の花」とされる彼岸花は、「死人花(しびとばな)」という異称を持ちます。彼岸花はこの世のものとは思えぬ、どこか神秘的な雰囲気をたたえていますね。

祈りの日とされる春と秋の彼岸には、夕日を見送りながら亡くなった人をしのぶ風習があります。

今日は「秋の彼岸」のお話です。

秋の彼岸

「春の彼岸」は春分を中日とした前後3日間、「秋の彼岸」は秋分を中日とした前後3日間、どちらも中日を入れて計7日間のことをさします。

今年は9月20日(金)に彼岸入り、23日(月・祝)が「秋分の日」で中日、26日(木)が彼岸明けです。新元号「令和」のもと、はじめて迎える彼岸ですね。

彼岸の由来

もともと「彼岸」は、古代インドのサンスクリット語「パーラミター」に由来するといわれます。これは、私たちが生きる「此岸(しがん)」から、彼方の岸、理想の境地に至るという意味を持つ言葉。西の遥か彼方にあると信じられている浄土の世界。

「春分」と「秋分」は真東から太陽がのぼり、真西に太陽が沈むことから、浄土思想と結びつき、いつしか日本では亡くなったご先祖様を供養する日となりました。

彼岸には、お花やお供え物を持ってお墓参りをするのはもちろんのこと、夕日を見送りながら、亡くなった人をしのぶ「日想観(じっそうかん)」という風習も残っています。

浄土を思い夕日を眺め、夕日を見送る「日想観(じっそうかん)」

©️2019 三浦奈々依

大阪市天王寺区に鎮座する聖徳太子が創建した「四天王寺」。

昔この辺りは、西側に海が迫り、沈む夕日を眺めることが出来る絶好の場所でした。

古のひとたちは真剣に考えました。

極楽浄土に行くためには、どうすればいいのか……

「西方極楽世界に往生する修行の法として説いた十六観法の一、儀容を正して西に向ひ、日輪の西方に没するを観ずる、これ一には心の散乱を静むるがため、二には弥陀浄上の所在を静観するがためである」

これは、『観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)』の中の一節。

極楽浄土へ行くための方法のひとつとされたのが、西の浄土を思って夕日が沈む様を眺める修行、「日想観」だったのですね。

静かな心で夕日を見つめることは、自身の内面と向き合うことでもあります。

四天王寺西門は日想観の修行の中心地として賑わいましたが、長い歴史の中でいつしか、その風習も途絶えてしまいました。

四天王寺が年中行事として、再び、日想観の法要を始めたのは今から18年前の秋。

春分と秋分の日の夕刻、西門では僧侶によりお経が唱えられ、多くの人が西の浄土を思い、夕日に向かって祈りを捧げます。たとえ曇りや雨で夕日を眺めることができなくても、もともと極楽浄土を静観するための風習ですから、問題はありません。

当日は、多くの露店が軒を並べ、阿弥陀堂前にて参拝記念の御札が無料配布されるそうです。

つい先日、私も四天王寺を訪れましたが、灼熱の太陽が燦燦と輝く境内、五重塔の方角から南門に向かって一陣の風が吹き抜け、厳かな気持ちになりました。

今年も9月23日の秋分の日、17時20分から日想観の法要が行われます。参拝は無料になっています。是非一度、お出かけになってみてはいかがでしょうか?

最西端の岬で祈りを捧げる、古代ハワイアンの聖地


ハワイオアフ島最西端の岬「カエナ岬」は、日本で極楽浄土が遥か西方にあると信じられているように、亡くなったウハネ(霊魂)が魂の故郷へ旅立つ聖なる地と信じられています。

修行をしたウハネは、夕日とともにこの岬からジャンプし、故郷へかえっていくのだそうです。この地は、昔と変わらぬ姿をとどめる古代ハワイアンの聖地。幾度も道路工事を試みたものの、そのたびに天変地異がおこり、カエナに続く道の工事は休止を余儀なくされました。

©️2019 三浦奈々依

今から4年前、私は亡くなった妹が大好きだったハワイを訪れ、カエナで祈りを捧げました。

往復、約2時間半のトレッキング。もともと鉄道が通っていたということもあり、平らで歩きやすい道ではありますが、道が崩れているところもちらほら。

早朝にトレッキングを開始。

赤茶けた海沿いの一本道にはサボテンの花が咲き、アホウドリや天然記念物に指定されているハワイアンモンクシールがのんびりとくつろいでいました。

聞こえるのは、風と波の音だけ。

岬に近づくにつれ、赤茶けた道は真っ白な道へと変わり、眼前に人気のない美しい海が広がります。

そこは、まさに天国。

私が知っているオアフとは、別世界でした。

あの日、女性がひとり、岩場にもたれ涙を。きっと、この世にいない大切な人を思って泣いていたのでしょう。彼女と言葉を交わすことはありませんでしたが、ともに祈りのひとときを過ごしました。

日本から遠く離れたハワイ。

天上の光が降り注ぎ、清らかな光を放つ海は魂の故郷への入り口。

この海の彼方に日本がある。そう思ったら、すべての国、人、二度とは会えない妹ともつながっていると思えた旅でした。

思い出は遠くあせても、決して変わらぬ思いがありますね。

まもなくやってくる秋の彼岸。

夕日を見送りながら、亡くなった人をしのび、祈りを捧げましょう。

 

参考文献:小学館『日本の歳時記』 / 山下景子『二十四節気と七十二候の季節手帖』

三浦奈々依 のプロフィール

三浦奈々依

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。

ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。
東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり「神様散歩」の連載を執筆。心の復興をテーマに、神社仏閣を取材。

全国の神社仏閣の歴史を紹介しながら、日本の文化、祈りの心を伝えている。

被災した神社仏閣再建の一助となる、四季の言の葉集「福を呼ぶ 四季みくじ」執筆。


http://ameblo.jp/otahukuhukuhuku/
アマゾン、全国の書店、世界遺産・京都東寺等で販売。


カラーセラピストとしても全国で活動中。
旅人のような暮らしの中で、さまざまな神社仏閣を訪ね、祈り、地元の人々と触れ合い、ワインを楽しむ。

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