「猫」が人の心と体に与える影響と可能性を考える〜猫の不思議と神秘(後編)〜

2019.11.27

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マーク・ケイ

マーク・ケイ ( ライター・占術家 )

墨が織り成す一子相伝の占術 “篁霊祥命(こうれいしょうめい)” を主な鑑定手法とする占術家。他にも文筆家やイベント・オーガナイザーとしての顔も持つ。また引きこもり支援相談活動なども行なっている。

「猫」が人の心と体に与える影響と可能性を考える〜猫の不思議と神秘(前編)』では予知能力や危険を察知する能力など、猫が持つ不思議な力に主にスポットを当てました。

今回は、冒頭で猫の「神秘性」の部分に触れた上で、猫という存在が人間の心や体にどんな影響を与えているのかを見ていきたいと思います。

猫の王が住む山

熊本県阿蘇郡高森町にある阿蘇五岳(あそごがく)の一つ根子岳(ねこだけ)は、花の100名山に選ばれるトレッキングの名所として有名で、春から秋にかけて色とりどりの花々が咲き乱れます。

この根子岳は、「猫岳」とも書き、地元では「猫の王が住んでいる」と伝えられています。

明和9年(1772年)に森本一瑞が著した「肥後国誌」に「猫岳には猫の王がすむので、郡内の猫は年々、除夜にはかならず、この山に詣でるという」と記されています。

また江戸時代の国学者、伊藤常足が天保12年(1841年)に編纂した九州全域の詳細な地誌である「太宰官内志」には「阿蘇岳の東に猫岳という山があり、この山には猫の王というものがすみ、年ごとの節分の夜には、阿蘇郷内三里あたりの猫が、みんなこの山に集まるという」とあります。

この「太宰官内志」には土地の人の話も記されています。それによると、この山には数百の猫が住んでおり、時々その猫を見る人がある。二、三百も連なって歩く。その中には、いろいろな怪異な猫がいると語られています。

これに限らず猫の王の存在は、江戸時代から近代にいたるまで数多くの書物に記されています。私たちが普段見かける猫とは違った怪異な猫が、根子岳とその周辺に実在したのかもしれません。

猫は人に死に目を見せないともいわれ、年老いた猫は突然家からいなくなるという話もよく耳にします。

慶応2年(1866年)に長野内匠俊起という人が著した「南郷事蹟考」には、根子岳は猫が宮仕え(宮廷などに仕えること)に登る山であり、飼われている猫が年をとるとこの根子岳に逃げて来ることがある、それを「宮仕えに行った」というと記されています。さらに根子岳では豹ほどの大きさの猫を見たとか、鹿ほどの大きさで尾は八尺(約2メートル40センチほど)ばかりあったとの記述も見受けられます。

年老いた猫が、ひとたび根子岳に登り宮仕えをすると、姿形も性格も変わり、怪異性を身につけるとでもいうのでしょうか。

猫の王は、毎年大晦日の夜に阿蘇郡内の猫たちを呼び集め、御前会議を開きました。それが「猫岳」と呼ばれるようになった所以です。いなくなった猫は数ヶ月も経つと、不意に戻って来ることがあったそうで、戻って来た猫の耳は裂けているといいます。

前編の冒頭で、私がともに暮らした三毛猫「まーこ」が、引っ越し先を探して十数キロの道のりをさまよい舞い戻ったお話を致しました。この時、「まーこ」は引っ越しの前日から姿を消しました。

2週間ほど経って、引っ越し先に突然現れた「まーこ」。本来は綺麗な毛並みをしていたのですが、薄汚れ、見るからにやせ細っていました。

再会した後の「まーこ」は、心細い旅に疲れ果ててしまったのか、飼い主が突然いなくなってしまった落胆からなのか、どこかよそよそしく、荒々しく、妖しげな雰囲気を漂わせていたのを今でもはっきりと覚えています。

もしかすると、「まーこ」も根子岳に類する山に宮仕えに行っていたのかもしれませんし、戻って来た「まーこ」の体には、私の気付かない身体的変化があったのかもしれないと、想像してしまいます。

年老いた動物は怪異な存在に変化する?

話は少し横道に逸れますが、年老いた猫が山に入り怪異性を身につけるという話から、私が思い出したのは「」です。狸も猫と同じく「化ける」とされる生き物です。

登山好きな人のバイブルとなっている、北アルプスの三俣蓮華小屋(現在の三俣山荘)のオーナー伊藤正一さんが書いた「黒部の山賊」という本があります。ここには北アルプスの山々で実際に起こった数々の怪異が書かれています。

この中にいくつか「狸」に関するエピソードが書かれているのです。

ある秋のこと、林平と倉繁と喜作は濁(にごり)で猟をしていた。小屋の中にいるととつぜん、大嵐がきてものすごい雨が降って来るので、あわてて外へ飛び出してみると満天の星空だった。毎晩こんなことがつづいたが、ある朝、初雪が降って、狸の足跡がついていた。その足跡は小屋の周りだけにしかなかったので、小屋の床下を捜索し、ついに一つがいの大ダヌキを見つけて、雄の方を射止め、狸汁にして食べてしまった。

その夜から、嵐の音はしなくなったが、ある夜、一人で外へ出て行った喜作が「ヒャーッ」と悲鳴をあげて逃げ込んで来た。彼が小便をしていたら、腹の大きな怪物がきて、だきつかれたという。林平は雄ダヌキが仕返しにきたのだと言っていた。

『定本 黒部の山賊 アルプスの怪』伊藤正一(著)山と渓谷社 より

私も登山が好きで、各地の山に登っていますが狸のこうした怪異譚は珍しくなく、登山者の間ではもはや常識となっています。長寿になった狸は、妖力を身につけて体は大きくなります。そして様々な怪異を起こして、登山者をからかうのです。

狸が起こすもっともポピュラーな怪異は「音」です。

山小屋に宿泊していると、そこでは聞こえるはずもない音がしばしば聞こえて来ます。

快晴にも関わらず嵐の音や、雨の音が鳴り響きます。他にも「ノコギリの音」「大木を倒す音」「石を叩く音」「材木をころがす音」「米を研ぐ音」などがあり、ちょっと変わったところだと「こんばんはゴンベエサン」という声がすることもあるそうです。こうしたことに慣れている山小屋の主人や登山者は「狸の仕業」だと知っているので、大抵は慌てません。

狸の仕業なのかどうかは分かりませんが、こんな話もあります。

雪山登山中に猛烈な吹雪に見舞われた登山者が、必死の思いで山小屋に避難して、小屋の中でブルブルと震えていると、山小屋の外で楽しげに歌を唄っている者がいる。最初は怖くて耳を塞いでいたが、どうしても聴こえてしまう。だんだんその歌声が心地良く、楽しくなってしまい自分も一緒に歌い始めた。山小屋での不安な夜を、歌を唄うことで乗り越えられたというのです。

閑話休題。

山にいる狸が年老いると妖力を身につけて人を化かすというこれらの話と、猫岳に宮仕えに行く猫が怪異性を身につけるという話には、山という外界とは閉ざされた空間の中で動物たちがある種の神秘的な力をその身に宿すという共通点を見出すことが出来ます。

狸に化かされた話は、日本アルプスなどの深い山々では寓話や錯覚ではなく、事実だと受け止められている側面もあり、実際に体験した登山者も多くいます。もしかすると古い時代に彼の動物たちは年老いる過程で、何かしらの人智を超えた能力を発現していた事実があったのかもしれません。

その神秘性や怪異性に惹かれてしまうのが、人間という生き物なのです。

セラピストとしての猫の存在

猫の怪異な部分について見て来ましたが、次は猫は人間の心と体にどういった影響を及ぼしているのかを見ていきたいと思います。

ワシントン州立大学では、犬や猫といった動物と触れ合うことで日常のストレスによって分泌が亢進されてしまう「コルチゾール値」が、どのように変化するのかの実証実験が行われています。

249名の学生を無作為に4つのグループに分けます。

第1のグループは犬猫と10分間、自由に触れたり、戯れます。第2のグループはその10分間の間、第1のグループが犬猫と触れ合っているのを別室から観察します。第3のグループはやはり同じ10分間、犬猫のスライドを鑑賞します。第4のグループは携帯電話や本など、一切の刺激物を与えられずただ10分間待機させられます。

この4グループ全員から、起床時に唾液サンプルを採取すると実際に犬猫と10分間触れ合った第1のグループが有意に唾液中のコルチゾール値が少ないという結果が導き出されています。

Animal Visitation Program (AVP) Reduces Cortisol Levels of University Students: A Randomized Controlled Trial

受刑者を癒す猫たち

      

犬や猫との触れ合いが、うつ病やパニック障害といった心の病に効果を発揮することは最近よく知られるようになりました。彼らに触れ、語りかけることで気分が高揚し、癒され、血圧さえも下げてくれます。

病院や介護施設などでセラピー犬、セラピー猫として活動する犬猫はよく知られていますが、アメリカ・インディアナ州の動物保護団体「Animal Protection League」は、ペンドルトン刑務所において州と協力し「F.O.R.W.A.R.D.」というプロジェクトを推進しており、話題になっています。

この「F.O.R.W.A.R.D.」は受刑者と、保護猫が互いの存在を認め合い、信頼し合い、支え合い、助け合うというプログラム。刑務所の1室を、猫用に改築して受刑者がその世話をするのです。

保護猫たちは、劣悪な環境で育てられたり、虐待行為を受けたり、捨てられたりしたことによって傷付き、シェルターに保護されました。保護とはいっても、シェルターではほとんど1日中ケージの中で過ごさなくてはなりません。

しかし、刑務所の中ではケージに入れられることもなく、適切に管理された安全な環境でのんびりと仲間の猫たちと過ごすことができます。猫用の部屋にはキャットタワーだってあります。受刑者のお手製です。

受刑者と猫たちは、どこかその出自が似ているのかもしれません。受刑者は、きっと猫たちに自分という存在を投影しているのでしょう。

ある存在を慈しみ、許し、愛する。
その存在へ対しての自分の責任と務めを実感する。
そして、その存在の心を想像し、慮る。

こうした人間にとって大切な要素が欠けてしまうからこそ、犯罪に手を染めざるを得なくなってしまいます。「F.O.R.W.A.R.D.」では、それらが満たされるのです。

自分が誰かに対して、何かに対して責任を持っていると感じられることは「自尊心」に繋がります。自尊心が失われると、人は迷路に迷い込んでしまいます。また誰かとの、何かとの「繋がり」は人にとっての生命線です。これが途切れると、人は自分の存在意義を見失ってしまいます。

猫との触れ合いは、受刑者にとって「自尊心」と「繋がり」を復活させる素晴らしいキッカケとなっていることでしょう。この「F.O.R.W.A.R.D.」プロジェクトは、全米の刑務所に広がっているそうです。

How Shelter Cats Are Changing Prisoners Lives In Indiana
Pendleton Correctional Facility_FORWARD

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マーク・ケイ のプロフィール

マーク・ケイ

画家の父、歌人の母のもと、福岡市博多区で生まれる。

バンド活動を経て、DJ、オーガナイザーとしてアート系イベント、音楽イベントなどを多数手掛ける傍ら、フリーライターとしても活動。音楽雑誌でのアーティスト・インタビュー記事に始まり、書籍、フリーペーパー、WEBなどの媒体で社会問題からオカルトまで幅広いジャンルでコラムを執筆。

引きこもり、不登校、心の病など自身の経験を活かし「ピアカウンセリング」を主軸にしたコミュニティを立ち上げる。のちにひきこもり支援相談士として当事者やその家族のサポート、相談活動を行う。

現在は亡き父から継承した一子相伝の墨を用いた占術『篁霊祥命』や独自のリーディングによって鑑定活動を行っている。2019年で鑑定活動は14年目を迎える。

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